デザイン大学の卒業記念品のデザイン 2022

WORKS, 吉川賢一郎/WORKS

1. 経緯とデザインコンセプト

 2021 年度は卒業証書授与式の開催は決定したものの、コロナ禍の影響で、毎年開催されていた授与式後の謝恩会は中止となった。学生たちから卒業の記念となるものを配りたいという声が上がり、卒業記念品実行委員会が急遽発足することとなった。その年の大晦日、実行委員たちからデザイン依頼のメールが届き、除夜の鐘と共にこのプロジェクトが密かに始まった。実行委員たちと打ち合わせを進めていく中での、「長岡の道路は赤い」という長岡の第一印象の話が後にデザインの軸となる。消雪パイプ発祥の地である長岡の街は、消雪パイプから出た赤サビで染められているが、その赤サビの捉え方を換えてみると、まるで抽象絵画のような美しいマチエールに驚かされる。そのような視点での驚きをもとに「赤サビの美しさ=長岡らしさ」をコンセプトとし、社会人になってから仕事でも使えるようなオリジナルトートバッグ「Sabi-Sabi Bag(サビサビバッグ)」をデザインした。このトートバッグの底に印刷されている「There is no unmeltablesnow(解けない雪などない)」は、長岡で学んだ卒業生たちへの応援メッセージ。これから厳しい社会にもまれて必死で生きていく中で、このバッグの底のメッセージを見つけてもらい、人生においても解けない雪(=困難)はない、と伝えることで辛い時にみんなを励ましたい、と考えた。

2. キービジュアル

 このトートバックのデザインコンセプトを明確に伝えるために、コンセプトの視覚化=キービジュアルを配布用のポストカードとB1ポスターに制作した。1月から 2月までの間にロケハンから撮影までを行った。長岡市民にとってもあまり良い印象ではないはずの、なんの変哲もない街中の駐車場や小学校の体育館に染み付いた赤サビを今までにない新しい視点でその街らしさとして捉えることで、冬の長岡の美しさを見つけ出したといえる。なお、この写真は瞬間を撮影したもので、合成処理は一切していない。


Client:長岡造形大学卒業記念品実行委員会
AD,D:吉川賢一郎 PD:村上明栄 COPY:田中陽奈子 PR:田中陽奈子・川俣直子・長沢匡玖 P:グラフィック/鈴木結葉・田村彩有美 バッグ/松崎典樹(NON SUCH PHOTOGRAPHY) バッグ製作:クーペ株式会社 ポスター印刷:株式会社山田写真製版所 パッケージ印刷:株式会社中央印刷 協力:長岡市立表町小学校,(株)長岡土地